「年金問題」という言葉を耳にしたことのない人はいないのではないでしょうか。国としても年金は大きな問題ですが。個人の生活を考えた上でもとても大きな問題が年金です。さて、この年金、保険料を払っていないとどうなるのでしょう?また、払っていない人は今から何かできることはあるのでしょうか?年金問題から手続き、ちょっと気になる増額や老後対策まで簡単にまとめてみました。
年金未納問題は国の大問題!?
年金関係のニュースが放送されない月はないのではないか?というくらい、年金は国民の注目の的、そして心配の種になっています。年金こそが老後の生活資金の中心とさえ言えますから、年金がいくらもらえるか、年金が将来的にどうなるのかはほとんどの人が気にしているのではないでしょうか。つい最近では、集めた年金保険料の運用がニュースになっていましたね。
集めた年金保険料は、株や債券といった金融商品で運用され、その金利を含め年金に充てられています。株で運用する比率を増やしたため、株価が不安定になると年金自体がそのあおりを受けるというのです。しかし、日本の年金には、運用以上に頭の痛い問題があることも、ニュースなどで報じられてよく知られているのではないでしょうか。
年金の未納率は高い?
年金は世代間の支え合いを目的としています。若い人がお年寄りを支えるために年金保険料を支出する。これが基本です。未納の若い人の言い分の一つに「将来的に自分たちがもらえる可能性が低い!」「自分たちの世代はほとんどもらえなくなるのに、今のお年寄りは潤沢な年金をもらっている」というものがあります。
確かに将来的な不安な、世代間の不平等感もありますが、今のお年寄りに年金がなければ、それはそれで若い人が困るところ。なぜなら年金が少額でも支給されていれば、そのお金をベースにして父母の介護費用を考えることができますが、年金がなければ満額、子供が払わなければいけません。
父母それぞれに月5万円の年金があり子供が父母それぞれの足りない分の5万円を渡せば、子供のお給料から10万を支出するだけで済みます。しかし年金がなければ、子供は父母の介護費用として毎月20万円支出しなければいけません。
この差は大きいですよね。なければないで非常に困る、しかし、手続きも面倒だし、手取りのお給料からごっそり持って行かれる年金保険料に溜息をつきたくなるのも頷けます。
問題点は年金の仕組み?
年金の基本は世代間の支え合いで、若い世代の年金保険料がお年寄りを支えています。そして、年金保険料の払っていない人は基本的に年金がもらえません。しかし、未納でも今のお年寄りはお金をもらっている。どういうことでしょう。これも、年金制度の不平等感、アンバランスさの一因になっています。
今のお年寄りの中には、年金制度ができる前に生まれた方もいます。そういった方は、制度自体がなかったわけですから、年金保険料を払うこと自体が不可能でした。だからといって無年金というわけにはいきません。年金記録がずさんだったこと、そして収支のバランスがいまいちきちんと取れていないこと、将来への年金の不安、年金保険料の運用への不安、世代間の不平等感、などなど、年金に関する問題はとても多いと言えます。
だからといって払わないではいけません。一人が払わないことにより、他の若い世代が、その人が払わなかった分まで背負わなければいけません。簡単に言うと、その人のお父さんやお母さんを他人が代わっておんぶしているということにもなります。また、そういった不公平さとは別に、払わないことによってデメリットを甘受しなければいけません。
家計的に苦しいのであれば相応の手続きを取れば減額や免除が受けられますから、年金の手続きは将来の生活費に繋がると考えて、しっかりと、取り零しなく行うようにしましょう。払わないことによりどんなデメリットがあるのかを具体的に説明しましょう。また、今からできる手続きも一緒にご紹介します。今からできることもありますよ。
年金未納だとどうなるの?
未納だともらえない?
※老齢基礎年金を受けるためには、保険料を納めた期間、保険料を免除された期間と合算対象期間(★)とを通算した期間が原則25年間(300月)以上あることが必要です。
年金は、年金保険料を、決まった年月支払うことでもらうことができます。決まった年月を満たしていない、つまり払っていないともらえません。
現在は、通算25年(300カ月)国民年金保険料を払うことでもらうことができます。これより長い期間払っていればその分おまけ金額が降り積もって行く感じです。
国民年金と厚生年金の関係
じゃあ厚生年金って何なの?こっちはもらえるの?そもそも厚生年金って何?と思われるでしょう。厚生年金は、会社などの団体が独自に運営している年金のことです。国民年金は国で運営していますから「国民」の年金です。厚生年金は会社で運営する福利厚生のようなものですから「厚生」の年金です。
厚生年金は会社で加入できますが、こちらは国民年金がもらえることを前提として、国民年金に厚生年金を加算する形で受け取ります。厚生年金の保険料は、会社から天引きされる保険料に国民年金の分と合算されています。
二個の積み木が縦に重なったところを想像してください。二個の積み木の下の方の積み木だけを抜き取れば、上の積み木も崩れます。国民年金と厚生年金はこの二個の積み木の関係です。国民年金という下の積み木を取れば、厚生年金は崩れます。
いざという時の保障もなし?
■国民年金は決まった期間(25年間)払っていないともらえない。
以上のポイントをまず明確にしてください。
年金保険料を払っていないともらえないというデメリットの他に、いざという時に保障が受けられないというデメリットもあります。体を壊した時に使える障害年金や、家族が亡くなった時にもらえる遺族年金といったいざという時の保障もなくなります。
特に障害年金は、病気で就労不能になった時に等級によって月々6万円から9万円ほどの金額が、体が回復しない限り生涯に渡って受け取れるため、有り難い国民年金の特典です。こちらの特典やいざという時の助けも、きちんと年金保険料を払っていなければもらえません。
障害年金や遺族年金をもらうためには、一定期間の年金の支払いがなければいけません(未成年に対しては特例あり)。就労不能になって生活費がない。障害年金を申請したら「払っていなかった人にはあげません」と言われてしまう。年金保険料を払っていない方の中には、障害年金がブーメランのように返ってくる方も多いとか。
「もらえない」以上の恐怖!差し押さえの強制執行もあり?
年金がもらえなくなる、いざという時の保障が使えないだけでなく、年金保険料の不払いが続くと強制執行の可能性もあります。
年金の不払いを続けている人の中には「払っていないけど、強制執行なんてされたことがないよ」という人もいるでしょう。しかし、年金保険料や税金の不払いに関しては、わりと簡単かつすぐに強制執行できることになっているのです。
本来なら、不払いの人には強制執行できるのですが、強制執行をするにも手間とお金がかかります。その人が不払い分の年金保険料に相当する額を持っているかどうかも分かりませんし、その人の不動産やアクセサリ、服、バッグなどが手続きにかかった費用より高額で処分できるかも分かりません。
強制執行をする時はその人の財務調査をするのですが、財務調査の中身と、実際にその人の財産が売れるかどうか、強制執行が功を奏するかどうかは別問題です。財務調査で銀行に財産があることを掴んだけれど、差し押さえをしてみたら、あらら空振りだったということもあるのです。不払いの人の中には、税金含め他のお金も未納の方もいますので。
税金や年金保険料は国を回すためのお金です。個人の借金による強制執行とは訳が違います。しかも、強制執行をする時は事前に「強制執行します」と知らせることはありません。財産隠しや逃げに繋がるからです。
強制執行はわりとあっさりできてしまうのですが、未納の人が多いため手続きや金額面で効率的とは言えないため、あくまで見逃されているだけと考えるのが賢明です。未納だと、何時「ごめんください。強制執行です」と執行官が来てもおかしくはないのです。
マイナンバーでもっと怖くなる?
マイナンバーに個人情報が紐付けされ、銀行や証券会社の口座情報などが官公庁を越えて即座に参照できるようになれば、財務調査が簡略化できると考えられます。また、財産があることが、年金事務所の方で簡単に分かるようになります。マイナンバー制度により強制執行が加速する可能性があることも留意しておきましょう。
未納対策は今からできる
制度を活用して未納期間分を納付
未納分に対する対策として後納制度があります。
連続で25年間払うのではなく、通算で25年間払えば問題ありません。要は基本的に「どうにかして25年という期間払い切ればもらえ」ます。うっかり未納でも後払いできますから、手元にお金があればなるべく後払いででも年金保険料を払ってしまいましょうただし、遡って支払える期間に制限があります。ですから、ある程度の御歳でまったく払っていない人は、後払いで25年という期間を満たすのは難しいと言えます。
過去5年分まで国民年金保険料が納められます!
後納制度とは、時効で納めることができなかった国民年金保険料について、平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、過去5年分まで納めることができる制度です。
後納制度を利用することで、年金額が増えたり、納付した期間が不足して年金を受給できなかった方が年金受給資格を得られる場合があります。
年金の加入歴が一部欠けている方は、とにかく年金記録を洗ってみましょう。
自分で年金事務所に足を運ぶのも良いですが、できれば社会保険労務士に相談してください。なぜなら、年金はとても複雑な制度ですから、申請や手続きの際の書類、その手続きや書類が使えない場合の代替措置は年金事務所よりも社会保険労務士の方が詳しいからです。
洗い直しや金額算定は難しいので、社労士の協力を仰いだ方が効率的です。有資格者が無料相談を行っていることもありますから、見つけたら積極的な活用をお勧めします。自分では年金の支払いが足りないと思っていたのに、記録をきちんと調べてみたら、途中で適切な手続きをしていて足りることが分かったということも有り得ます。
離婚歴がある場合は……
離婚した人は元配偶者に年金の分割請求ができます。これは、もらえる金額そのままをぱっくり割るのではなく、加入歴の分割という意味合いが強く、配偶者の扶養になり、年金を夫の給与から天引きされていた方には嬉しい制度です。
今まさに離婚について手続きを進めている人は弁護士に、過去に離婚した人は社会保険労務士に相談しましょう。適切な分割請求をとることにより、自分一人の年金支払い期間では年金給付に足りなくても、総合的に期間を満たしている可能性があります。また、2年という請求期限があることにも注意が必要です。
支払いが難しい時は免除手続きを!
お金がなくて支払いが苦しいという人はきちんと手続きをすることで、年金保険料免除期間も将来年金をもらう時に必要な期間に参入することができます。
年金をもらうためには25年の支払い期間という約束事を守らなければいけませんが、支払いが苦しい人は手続きをすれば、年金保険料が減額または免除になります。この減額や免除の期間も年金の必要期間である25年に算入できますから、手続きさえすれば必ずしも年金保険料を必ずしも支払う必要はないのです。
収入の減少や失業等により保険料を納めることが経済的に難しいときの手続きを案内します(保険料免除・納付猶予)。
国民年金第1号の被保険者は、毎月の保険料を納めていただく必要があります。しかしながら、所得が少ないなど、保険料を納めることが難しい場合もあります。
そのような場合は、未納のままにしないで、「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の手続きを行ってください。
保険料免除や納付猶予になった期間は、年金の受給資格期間(25年間)には算入されます。
いざ年金が支給される年齢になって、「あの時は苦しくて払えなかった」ではいけません。この期間算入の対象になるのは、あくまできちんと「払えません」「減額してください」と、年金機構所定の用紙で手続きした分だけです。手続きしておらずに年金支給の段になって言っても難しいですから、年金保険料の免除や減額をお願いしたい人は、こまめに、きちんと手続きをした方が良いでしょう。
まったく手続きせずに支払いをしないと期間に参入はできませんが、手続きすれば免除でも減額でも、その期間はとにかく25年の中に含まれます。また、きちんとこういった手続きをしていれば、その人の家計の状況も年金機構側で分かりますから、強制執行を回避することにも繋がります。
なお、免除や減額された年金保険料は、後で免除・減額分を追納することも可能です。追納すればもらえる年金額に反映されます。
年金だけで大丈夫?対策のススメ
付加保険料って知ってる?
付加保険料とは、毎月の年金保険料にプラス400円支払うことで、将来の毎月の年金額にプラスしてもらえる制度のことです。付加保険料制度を使うと国民年金基金には加入できなくなりますが、単純計算でかなりお得であることは言うまでもありません。どのくらいお得かというと、40年間付加年金を払っていた場合、いざ年金支給となってから約2年で元がとれてしまうくらいです。
国民年金の財政が心配なのですが……という声が聞こえそうですが、国民年金基金の母体が県、保険の母体が保険会社であることを考えれば、国民年金の母体は国と、もし危機が迫ったらどこに国がテコ入れするかを考えれば、老後対策として年金額を付加年金でアップさせるのは優秀な方法という気がします。
ただしこの制度、減額や免除中の方は使えませんのでご注意を。あくまで通常の保険料額を払っている人が対象です。減額や免除がなくなり普通の保険料額の支払いが再開すれば、付加年金が使えますよ。
繰下げ給付を賢く活用
厚生年金に加入していない……
自営業者やフリーランスは厚生年金への加入ができませんから、過去に加入歴があれば、その分少しだけもらえることもあります。しかし、会社で長年厚生年に加入していた人の年金額より、かなり低くなることが多いでしょう。そんな時は、付加保険料または国民年金基金を活用することになります。
国民年金基金は掛け金が相応に高いですが、控除の対象になるため、自営業者やフリーランスには有り難い制度です。国民年金基金に加入することで国民年金にプラスして基金からももらえます。ただし、付加保険料とはどちらか一つしか選べないため、慎重に選択する必要があります。可能なら、社会保険労務士の無料相談などに参加し、自分の年金記録を見てもらった上でアドバイスをもらうと良いでしょう。
年金以外の備えを考える
障害年金や遺族年金の他にもしもの備えとして、各種保険を検討する必要もあります。「就業不能保険」「生命保険」「医療保険」でカバー可能です。中でも医療保険は入院に対する備えとして優秀です。就労不能になった時は就業不能保険が有用ですが、いざという時に給与のようにもらえるという特性も相まって、保険料が割高という欠点があります。
毎月、生命保険、医療保険、そして月単位ではありませんが毎年必要になる自動車保険や住宅保険、地震保険に火災保険の保険料を考えれば、なかなか就労不能時に備える保険まで手が回らないのではないでしょうか。代わりと言っては何ですが、歳を経るごとに病気や怪我のリスクも高くなることを考えて、保険料が一定年齢までで払い終わるタイプや、後遺障害になった時に保険料が免除になるタイプを選ぶと良いでしょう。
年金にプラスしてもらいたいのなら「個人年金保険」もお勧めです。変額年金の年金タイプもありますが、こちらはもらい方によっては保険料積立額を下回る商品形態も多く、商品選びに老後の備えがかかると言っても過言ではありません。
保険には色々なタイプがあり、全てのリスクに備えて全種の保険に加入するのは金額的負担を考えると難しいです。優先順位を付けて、自分の中で重要な保険に優先的に加入するようにします。
まとめ
年金保険料として実際にお金を払っていても、手続きさえしていればその期間は納付期間に参入されます。また、手続きをすることでその人の懐状況も分かりますし、記録として残りますから、強制執行を回避するという意味でも重要です。
税金もそうですが、致命的な未納は、相談すべきところに相談せず、手続きも何もしていない未納です。反対に考えれば、社保庁や役所に相談し、するべき手続きをしていれば、心配することはありません。
いちいち面倒と思うかもしれませんが、自分の生活に直接的に関係することですし、自分が年金をもらえなければ最終的に子供の支出や苦労も増えるわけですから、なるべくこまめに手続きすることをお勧めします。もし手続きで分からないところがあれば、書類がない場合や記録が消えている時も代替手段を心得ている社会保険労務士に相談すれば、打開策が見つかるかもしれません。
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