誰しも気分がふさぎ込んだり、滅入ったりすることはありますが、たいていは時間がたてば立ち直っていくものです。しかしうつ病は、憂うつ感、気力の減退、不安感、体の変調、これらの複合が長期間続くものです。
うつ病は、本人の気持ちの持ちようで解決するようなものではなく、「心の病気」です。職場や家族で、うつ病かもしれないとその人が感じたら、家族なら専門医に一緒に相談・診察にいく、職場なら、上司や産業医を通して、その人の家族とともに専門医に診断を受けることを勧めなければなりません。
なぜなら、先にも言ったようにうつ病は、本人の気持ちの持ち方や周りの励ましで解決するような容易なものではないからです。この人がうつ病かもしれないと感じたら、むしろ、接し方に十分に注意が必要になってきます。
誤った接し方によって、自殺や犯罪、何かへの依存症化など重大で取り返しのつかないことになる恐れがあります。以下に、家族や職場の人が気づきやすい変化をあげます。
うつ病かも・・・変化の見つけ方
①全体の様子として、「ふさぎ込んで、元気がない」「物忘れや言ったことを覚えていない」「今日の出来事や新聞・テレビ・雑誌など頭に入っていない」「趣味や好きなことに無関心になった」などがあります。
②会話の中では、「ボソボソや独り言」「あまり喋らなくなった」「話が続かなく、ぼんやりしている」「生きがいがないとか、人生の無意味さなどを語ったりする」と言う傾向があります。
③行動面から見受けられる傾向として「服装に無頓着になった」「会社や学校へ行きたがらなくなった」(極端な例は、不登校や無断欠勤などとして現れます。)「食欲がない、味覚が以前と変わった」「家事ができない(食事がつくれない、掃除ができない、洗濯物がたまるなど)です。
④体調面からは、本人以外は、よく観察していないとわかりにくいことも多いのですが、「あまり食べなく痩せてきている」(逆に過食に走るケースもあります)「眠れない、疲れた、だるい、頭が痛い、胃が痛いなどの発言が頻発するようになった」「肩こりやめまいで苦しそう」などといったことがあります。
もし本当にうつ病であれば、周りで接する人は、ほとんどうつ病に対して、素人であり、また、偏見を持っているかもしれません。最初に書いた通り、接し方を誤ったら、大変なことになる可能性もあるのです。
長期間に渡り、うつ病と思われる状態が見受けられた場合は、受診を勧めたり一緒に行ってあげましょう。ちまたでは「心療内科」の新規は、数か月待ちなど、よくある話で、それだけ多くの人が心を病んでいる証拠でもあります。
「心療内科」の先生は、精神科医であり、独立開業した人が多く、症状の重すぎる人は、時間ばかりかかり儲けにならず、敬遠される傾向があります。
できれば、精神科・神経科病院をお奨めします。精神科病院の精神科医は、大抵、精神保健指定医師の資格を持っており、他に臨床心理士、精神保健福祉士を配置している病院が多いと思います。
心理士さんには、お医者さんに話せないことも話せますし、精神保健福祉士は、今後の生活などへのアドバイスもしてくれます。ただ、精神科に対する、偏見は大変大きく、その不安要素を以下にあげました。
受診の不安要素
①入院が必要になるのでは・・・
最近のうつや精神科薬は、数年前より飛躍的に症状に合う、良い薬がわが国でも認可されており、自殺願望等よほど重度の精神状態でなければ入院する必要はないと思われます。
②薬づけにされるのでは・・・
確かに投薬による治療は、必要です。風邪をひいて病院にも行かず、薬も飲まない人は稀だと思います。ただ、風邪薬に比べて長期服用が必要になってくるのは事実です。
しかし、「抗不安薬」「抗うつ薬」「抗精神病薬」「導眠薬」「胃薬系」「栄養系薬」など専門医が、症状に合ったものを処方してくれ、その後、改善にあっているかどうか薬の微調整もしてくれます。
③治療しなくても治るのでは・・・
自然には治すのは難しいと言えます。しかし、都会のサラリーマンがすべてを捨て、田舎でのんびり暮らすなど環境を劇的に変えれば別ですが。体の病気と同じように正しい治療をしましょう。
④うつ病と診断されたら、会社を辞めたり、休んだりしなければなるのでは・・・
社会人の場合、ここが一番の問題点だと思います。平成23年度、厚生労働省は、精神疾患を5大疾患と定義しました。うつ病は、精神疾患の中の気分障害ととらえられます。
実際、多くの人がうつ病で「労災」認定されて、通院されています。そもそも厚労省は、がんなどの成人病を三大疾病と定義していたものを5大疾病としたことは、社会的にうつ病が認知された大きな証拠です。
うつ病によって、会社側から不当な扱いを受けることがあってはならないのです。ただ、会社側からの配慮で、負荷の低い部署などへの異動を命じられるかもしれませんが、これは、あくまで会社側の配慮であって、早く完治させて、花道へ戻るのが、人生にとっても最良の方策ではないでしょうか。
ここまで、うつ病の人への接し方や治療に向けた動機づけの話をしましたが、いかがでしょう。今周りにいらっしゃらなくても、うつ病はいつなるかもわからない病気です。
うつ病になった方への接し方は、そっと黙って寄り添ってあげるのがよいのですが、人間ついつい何か言わなきゃいけないのではとなってしまいます。
4つの禁句
①励まし・・・「しっかりしてね」「頑張れ」
②わかっているふり・・・「くよくよしないで」「早くよくなって」「心配してる」
③解決しようとする・・・「どうしてなったのかなぁ」「今後どうしようか」
④責める・・・「いつ治るのかな」「怠けているんじゃない」
これらの言葉は、うつ病になってしまった人を追い詰めるだけです。また、望んでなる人もいないことも理解して下さい。
毎年、自殺者の数が年代によっては、死亡原因の常にトップです。あなたのその一言で自殺者をつくるかもしれません。言葉という、鋭利な武器を知らず知らずに振り回さないよう気をつけていきましょう。
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