アルコール依存症の人が、インターネットなどを介した「e-治療プログラム」を利用しても、今のところは、短期的に飲酒量が少し減らせる可能性はあるが、長期的な治療効果は望めないようだと分かった。
e-治療プログラムの効果は?
米国デューク大学医学部を中心とした研究グループが、米国内科学会が発行する内科分野の専門誌アナルズ・オブ・インターナル・メディシン誌で2015年8月4日に報告した。
アルコールの乱用や依存症に対する治療プログラムの1つとして、コンピューターや電話などの電子機器を利用した介入プログラムが存在する(飲み過ぎ警告スマホアプリ、「医学的な根拠に基づく」とシンガポール研究グループを参照)。
こういったプログラムはまとめて「e-治療プログラム(e-interventions)」と呼ばれている。
研究グループは、e-治療プログラムの効果について、これまでに論文報告された研究データを基に検証した。
過去の論文をまとめて解析
まず、医学論文の国際データベース「メドライン(MEDLINE)」「コクラン・ライブラリー(Cochrane Library)」「エンベース(EMBASE)」「サイクインフォ(PsycINFO)」を検索した。
2000年から2015年までに発表された英語の論文の中から、アルコール依存状態の50人以上とそうではない人のグループで、e-治療プログラムの効果を6カ月以上にわたって比較した研究論文を収集した。
集まった論文は全部で28報。e-治療プログラムの内容とは、CD-ROMや診療所のコンピューター、インターネット、モバイル機器、電話の自動応答などを通じてアクセスできる内容のものだ。
これらの研究内容を、「メタ解析」という方法を用いて統合的に分析し、治療の強さや効果について評価した。
人による介入は少ない
e-治療プログラムは、自分の飲酒量を入力すると、基準と比べてどのレベルなのかを教えるという1回限りのものが多かった。
また、アルコールが健康に及ぼす悪影響を伝えるものも多かった。
人が関わる対応は、そもそもないか、あってもごくわずかしか含まれない治療プログラムがほとんどだった。
一方で、電話によるカウンセリングや1年以上の長期介入が行われるプログラムも、少数ではあるが存在した。e-治療プログラムの実施により、6カ月目でアルコールを取る量が平均して週に1杯程度減ったというデータもあったが、12カ月目で治療効果が得られたとするものはなかった。
現状では効果得られず
ガイドラインで上限とされている飲酒量にまで減らせたというe-治療プログラムもなかった。
また、過度の飲酒や社会的な失敗に対しても、e-治療プログラムは影響していなかった。今回の研究により、e-治療プログラムは、大して効果を発揮していないと分かった。
将来的には、より強い効果を伴った対策や人的支援などを加え、真に高い効果の得られるe-治療プログラムを作る必要があると研究グループは考えている。
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