あなたの同僚や上司が病気や怪我で早退してしまったり、お客様が風邪をひいていたりする時、どのような言葉をかけますか?
大抵が「お大事に」、「お大事にしてください(※後ほど解説しますが間違い)」といった言葉を使うと思います。
ただし、この「お大事に」という言葉にも、正しい使い方、それぞれに合った言い方・敬語の使い方があるのです。それでは実際にどのような言い方があるのか確認していきましょう。
上司やお客様に対してベストな「お大事に」の言い方
上司やお客様に対してベストな言い方をお伝えすると、こちらの2つとなります。
「お大事になさってください」・・・口頭
「ご自愛ください」・・・メールなどの文上
上司やお客様に対しての言葉になると、敬意を払わなければなりませんね。その場合「お大事に」だけでは少し足りないのです。そうなると「お大事になさってください」と声をかけるのが最も一般的でしょう。
また文上では「ご自愛ください」という言葉を使います。「ご自愛ください」はあくまで文語であるので、口頭で使うのはあまり勧められません。
ちなみに「くれぐれもお大事になさってください」、「くれぐれもご自愛ください」といったように「くれぐれも」という言葉を前につけるとさらに丁寧になります。
「お大事にしてください」という敬語は間違い
「お大事にしてください」と時々使う人がいますが、正確には間違いです。
なぜなら「する」の敬語は「なさいます」だからです。
「お大事にしてください」ではなく、「お大事になさってください」を使いましょう。
※参考に「する」の丁寧語・尊敬語・謙譲語を書きます。
丁寧語:します
尊敬語:なさいます
謙譲語:いたします
「ご自愛ください」を工夫してみる
「自愛」とは、自分の体を大切にする、自分の健康状態に気をつける、という意味になります。
自愛には、既に自分の体という意味が入っていますので「『お身体を』ご自愛ください」は間違いとなりますのでご注意ください。『お身体を』は不要です。
〜ご自愛の使用例〜
「季節柄、ご自愛ください。」
「ご自愛の程お祈り申し上げます。」
「くれぐれもご無理などなさらないよう、ご自愛ください。」
また逆に、かしこまりすぎてあまり使いたくないと思ったときは、文章に書く時でも「お体を大事になさってください」などのやわらかい表現のままでもよいでしょう。こちらだとあまり硬苦しい印象はありません。
親しい同僚や友達に対しては、あまりかしこまらない
それでは、親しい同僚や友達に対しての言葉になるとどうでしょうか?距離があってしばらく会っていない人の場合だと「お大事になさってください」「ご自愛ください」でも十分構わないのですが、いつも顔を合わせている間柄だとちょっとかしこまった形になってしまいますよね。
その場合はもう少し砕けた表現として「体に気をつけてね」を使いましょう。
たとえば、暑中見舞いや寒中見舞いで相手の体を気遣った文面にしたい場合は、「暑い日が続くので体に気を付けてね」だったり、「寒い季節になったから体を大事にしてね」という表現がよいでしょう。
あまりかしこまった表現だと相手との間に距離ができてしまうときもあるので、その都度使い方を変えるようにしたほうがいいですね。
事例から使い方を理解する「お大事に」
それでは実際に使ってみることができるように、事例からみてみましょう。
事例1.早退する上司に対して口頭で
○「お大事になさってください」
○「お体を大切にしてください」×「お大事に」「元気になってね」
△「くれぐれもご自愛ください」
「ご自愛ください」は絶対に使ってはいけないという言葉ではありません。しかし、時候の挨拶に一般的に使われているため、普段使いには適さないのです。上司やお客様に対して馴れ馴れしい言葉を使うのはもちろんNG ですが、徒に距離を取りすぎるのもよくありません。敬意を示した言葉をつかい、なおかつ慇懃無礼にならないようにしなければなりません。ここがまた敬語の使い方の難しいところでもあります。
事例2.上司やお客様に時節の挨拶をはがきで送る場合
○「まだ暑さが続くようですが、夏風邪など召されぬようご自愛くださいませ」
○「○○様におかれましては体調など崩さないようご自愛ください」×「暑い日が続くので体に気を付けてね。」
△「だんだん寒くなってきたので風邪など引きませんよう。」
「ご自愛ください」はそのまま使ってもよいですが、「ご自愛くださいませ」という言葉を使うとよりやわらかい印象を持たれます。また、△の「風邪など引きませんよう」は、「お風邪など召しませぬよう」などの敬語を加えていきましょう。
事例3.親しい同僚や友達への声掛けや時候の挨拶の場合
○「今日具合が悪いので休むね。」←「お大事に」
○「まだまだ暑さが続くようなので夏風邪をひかないようにね」
○「寒さがまだ体に凍みる季節なので体を大事にしてね」
こちらは目上の立場の人に対するのとは違っていささか気楽に声をかけたり、はがきを出したりすることができます。「親しき仲にも礼儀あり」という言葉もあるし、敬語を使って悪いということはあまりありませんが、使いすぎると慇懃無礼になってしまうので、そこだけ気を付けるようにしましょう。もちろん礼を欠きすぎるのもだめですよ!
まとめ
いかがでしたか?
このように、「お大事に」という言葉一つとってもさまざまな使い方があるのです。
確かに敬語を使い分けるのは大変なことのように思えますが、いったんマスターしてしまったら意外とすらすら自然に口から出てくるようになるのです。使いどころを間違えずに正しい使い方をすれば、上司や同僚の覚えもよくなるようになるでしょう。
敬語はたくさんありますが、無限ではありません。これを機会に、知らずに使っていた間違いやすい敬語などを見直してみるのもいいですね。
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