自宅でできる大胸筋の筋トレ・鍛え方と言えば思いつくのはダンベルプレスや腕立て伏せですが、何も考えずにやっていては効果が低くなります。また、これらの筋トレはフォームによって効く部位が違います。さらに、自重トレでは鍛えられない部位もあります。そんな大胸筋の、自宅でできる鍛え方・筋トレを部位別に、自重トレとダンベルトレから厳選し、それぞれ効果的な種目やポイントをご紹介します。
大胸筋の鍛え方の前に基礎知識
大胸筋はとても面積の広い筋肉
胸筋、正確には大胸筋は人体のなかでも、とても面積の広い筋肉の一つです。腕を閉じる、腕を前に押し出す、腕を下に押し下げる、腕を上に押し上げる、という多くの動作をつかさどっています。
大胸筋を上・下・外・内に分けて考える
胸筋を鍛える場合、胸筋のつかさどる様々な動作を分類し、部位別に分けて考えると効率的です。実際に体を動かして確かめてください。
それぞれの動作、「腕を上に押し上げる」=胸筋上部、「腕を下に押し下げる」=胸筋下部、「腕を前に押し出す」=胸筋外側、「腕を閉じる」=胸筋内側がメインになっています。
自重トレとダンベルトレーニング
自宅でできる胸筋のトレーニングとしては、道具なしでできる初心者向け自重トレーニングと気軽に購入できる器具での中級者むけダンベルトレーニングの2パターンです。もちろん、自重トレーニングだけでも一定の効果は得られますが、より効果を得たい場合は、若干の器具が必要となります。
中級者は用意したい最低限の器具
チンニング台
ファイティングロード (FIGHTINGROAD) マルチジム
胸筋をダンベルを使って鍛えるために、最低限用意したい器具の一つがチンニング台です。ダンベルプレス台にも流用できる腹筋台が付属した、このような器具を選定しましょう。
ダンベル
ファイティングロード (FIGHTINGROAD) ダンベル ラバータイプ (20kgセット) 【トレーニング解説DVD付】
ダンベルのプレート(重り)にはカバーなしのものと、カバーつきのものがありますが、自宅で鍛えることを考えると家具や床を傷つけないカバーありのものがオススメです。
プッシュアップバー
トータルフィットネス(TotalFitness) プッシュアップバー STT020
なくても腕立て伏せはできますが、まずは手首を痛めにくいこと、そして、より深く腕立て伏せができることから、できれば用意したい器具です。
部位別の大胸筋の鍛え方
ここからは、大胸筋を上部、下部、外側、内側の四つにわけて、それぞれに効果のある具体的なトレーニング方法をご紹介します。
大胸筋上部に効果的な筋トレ
大胸筋上部の自重トレーニング(初心者向け)
腕立て伏せで胸筋上部に刺激を与えるためには、こちらの写真のように足をヘソより高い場所においてトレーニングをする必要があります。ポイントはヘソを突き出すと足を高く置く意味がなくなるので、必ず腰を引いた大勢で動作をすることです。横から見てやや「へ」の字になるように意識しましょう。
斜め上方向へのダンベルプレス(中級者向け)
胸筋上部に効果的なダンベルトレーニングが、インクラインダンベルプレスと呼ばれる斜め上方向へのダンベルプレスです。自宅でトレーニングする場合、ソファーにもたれて動作をすることで代用できます。
ポイントは、肘を閉じると刺激が腕に逃げるので、必ず肘を外に大きく開いて動作をすることです。
こちらは、インクラインベンチがなくてもできる、ソファーを使ったインクラインダンベルプレスの動画です。
大胸筋下部に効果的な筋トレ
大胸筋下部の自重トレーニング(初心者向け)
胸筋下部に最も効果的な自重トレーニングが、こちらの写真のディップになります。自宅にある椅子を二つ使うことでも可能です。ポイントは、体をおろした時に両肘を近づけるように脇を締めること、体が前傾姿勢になるように頭を前につき出すことで、これにより、刺激を腕に逃がさずに胸筋下部に効かせることが可能になります。
こちらが、椅子を2つ使って行うディップの動画です。
斜め下方向へのダンベルプレス(中級者向け)
こちらの女性が行っている、腹筋ボードを流用してのダンベルプレスをデクラインプレスと言います。このような体勢でダンベルプレスをすることで、効率的に胸筋下部を鍛えることが可能です。ポイントはあまり肘を外に出さず、脇を締めた状態で動作を行うことになります。
大胸筋外側に効果的な筋トレ
大胸筋外側の自重トレーニング(初心者向け)
胸筋の外側を鍛えるために最適な自重トレーニングは通常の腕立て伏せです。胸筋外側は胸筋がより伸びた状態(腕を開いた状態)での動作に大きく関わるので、できる限り深く体をおろしましょう。プッシュアップバーを併用し、この写真のように手の向きが上腕と平行になるようにすると、より一層の効果が得られます。
ワイドスタンスでダンベルプレス(中級者向け)
ダンベルプレスで胸筋外側を鍛える場合に留意したいポイントは、ダンベルをおろした時に、やや肘の角度を広げ胸筋を大きく伸ばすことです。写真のように胸筋が最大に伸びた状態で、胸筋外部は最も刺激を受けます。
下記の記事はダンベルプレスのやり方や、フラットベンチがない場合の床での行い方などを詳しく解説した記事です。あわせて、ご参照ください。
大胸筋内側に効果的な筋トレ
大胸筋内側の自重トレーニング(初心者向け)
胸筋の内側は外側と反対で、胸筋がある程度収縮した状態(腕を閉じた状態)での動作に大きく関わります。ですので、この写真のように両手を近づけた状態での腕立て伏せが有効です。こちらはボールを併用していますが、道具がなくても可能です。ポイントは肘を伸ばしきり、胸筋が完全収縮する位置まで動作を行うことです。
ダンベルフライで追い込む(中級者向け)
胸筋内側を鍛えるためにオススメなのが、こちらのダンベルフライになります。一見、ダンベルプレスのように見えますが、肘を伸ばしダンベルを押し上げるのではなく、腕を開いた状態から閉じる動作です。ポイントは腕を閉じきった状態で、さらにダンベルを押し上げる方向に力をいれることで、これにより、胸筋が最大収縮=胸筋内側に効かせることが可能になります。
ダンベルフライは写真だけでは少しわかりづらいので、こちらの動画を参考にするとよいでしょう。
正しいやり方を知り、効果的な腕立て伏せを極める
腕立て伏せだけでも効果的に大胸筋を鍛えることが可能
こちらにリンクした記事は、腕立て伏せだけで大胸筋を鍛える方法を解説したものです。あわせてご参照ください。
大胸筋を鍛える以前に土台となる胸郭を広げる
20代前半までなら10cm近く胸囲が増え、30代でも数cmは増える
分厚い胸板と100cmを超えるような胸囲は男性の憧れですが、筋肉を鍛える以前に、その土台となる胸郭を広げると非常に効果的なのをご存知ですか?
筆者も10代後半に胸郭トレーニングをして、それほど大胸筋は発達していなかったにもかかわらず胸囲100cmを超えた経験があります。
分厚い胸板と100cmを越える胸囲は男性にとって憧れですが、筋トレで大胸筋を鍛える以前に、その筋肉が乗る土台作りとして「胸郭を広げるトレーニング」が重要なのをご存じでしょうか? 胸郭が小さいと土台部分が狭いため分厚い大胸筋を作るのには不利になります。また、筋肉だけで胸囲100cmを越えるのは意外と難しいものです。
発達が停滞した大胸筋を爆発的に刺激する筋トレ
唯一縦方向に大胸筋を刺激できるプルオーバー
どんな筋肉でも、同じトレーニングを繰り返していると筋肉が刺激に慣れてしまい発達しなくなる「停滞期」=「プラトー」に陥ります。それは、大胸筋も例外ではありません。
大胸筋のトレーニングは、腕立て伏せやダンベルプレスなどの「プレス系種目」とダンベルフライなどの「フライ系種目」がありますが、これらはいずれも大胸筋の収縮方向である横方向の刺激であるので、どの種目を組み合わせても筋トレのマンネリ化は防げません。
そんな時に、唯一大胸筋に対して縦方向の刺激を与えられるプルオーバーを導入すれば、爆発的な刺激となり、停滞期を突破して大幅に大胸筋が発達することが知られています。ただし、プルオーバーは動作が難しいことでも有名な種目で、きちんとしたやり方を知らないと刺激は全て背筋群に逃げてしまいます。
自宅で体幹も鍛えて効果を倍増させよう
大胸筋深層の体幹筋肉群を鍛えるとさらに効率的
体幹トレーニングは野球・サッカー・バスケ・テニス・陸上などあらゆるスポーツとダイエットに効果があるトレーニングメニューです。
また、それだけではなく、ダイエットにも効果が高く、男性にも女性にもおすすめです。
ダンベルや自重トレーニングだけでなく、体幹トレーニングで大胸筋深層のインナーマッスルや脊柱周辺・肩関節周辺のインナーマッスルを鍛えることで、さらに大胸筋トレーニングの効果が高まります。
さらに大胸筋を鍛えたいなら
最終的にはやはりバーベルベンチプレス
筋トレのなかでも人気の高いベンチプレス…100kgを挙げたい……そして、男なら盛り上がり肥大した大胸筋に憧れますよね。
そして、適切なメニュー・回数・食事を心がければ、一般に考えられているよりかなり短期間で実現可能なことです。
「もっと大胸筋を鍛えたい」という方には、やはりバーベルでのベンチプレスが絶対おすすめです。
ゴルジ腱反射を利用して爆発的パワーを発揮する
筋肉には、高負荷の伸展性収縮(筋肉が伸ばされないように耐える動き)の直後には、通常よりも強力な短縮性収縮(筋肉を収縮させて力を出す動き)の能力を発揮する「ゴルジ腱反射」と呼ばれる特性があります。
ベンチプレス競技をはじめとした、リフティング競技の世界では、このゴルジ腱反射を使用したウォーミングアップを行うことで、実力以上の重量を挙上するテクニックが使われています。
ベンチプレス100kgが挙がるか挙がらないか微妙な人が、このゴルジ腱反射のアップを行うことで100kgの挙上に成功することは少なくありません。
大胸筋に拮抗する背筋を鍛えてこそ完璧な上半身に
背筋を鍛えないと大胸筋の発達は限界がある
全身の筋トレのなかでも、最も人気が高く、初心者であればあるほど執着するのが「大胸筋の筋トレ」です。
なぜだかおわかりですか?
答えは「鏡で見えて自分で確認できる・ミラーマッスル」だからです。
ですが、大胸筋だけを鍛え続けても、逆三角形の鍛えこまれた外見の身体になることはありません。それは、身体のアウトラインを形作っているのは広背筋や僧帽筋などの背筋だからです。
また、大胸筋と対になって拮抗する筋肉である背筋を鍛えないと、大胸筋の発達にも限界があります。
これまで筆者が執筆してきた背筋トレーニングに関するいくつかの記事をリンクしますので、ぜひ、背筋も鍛えてワンランク上の身体を目指してください。
番外編:大胸筋に効く食事やプロテイン
鍛えたら食事もしっかり摂ろう!
なにも、大胸筋に限ったことではありませんが、身体作りの三大要素は「適切なトレーニング」「適切な食事」「適切な睡眠」です。
トレーニングだけ頑張って、食事をおろそかにしていたら、残念ながら結果はでません。
そこで、「大胸筋の鍛え方・番外編」として、筋トレの効果を高める食事やプロテインについてご紹介したいと思います。
筋トレしたら必要な食べ物の基本は?
筋トレをしてダメージを受けた筋肉は筋肉痛になります。そして、これが回復する時にトレーニング前より少し強くなるのですが、このような筋肉の性質を「超回復」と言います。
「超回復」を効率的にするために必要となる栄養素は、筋肉細胞の材料となる「タンパク質」と、タンパク質合成のエネルギー源となる「炭水化物」です。そして、理想的なタンパク質と炭水化物の比率は、タンパク質:炭水化物=1:2と言われています。
筋トレしたら必要なタンパク質の量は?
それでは、大胸筋をはじめとした筋トレをしている時に、どれくらいのタンパク質が必要かを解説したいと思います。
この必要量の算出には、除脂肪体重を知ることが不可欠です。除脂肪体重は、体脂肪率計のついた体重計で簡単に知ることができるので、まずは体重と体脂肪率を把握しましょう。
今回は、解説のためのモデルを体重70kg体脂肪率10%の人とします。この人の除脂肪体重は70kg×90%=63kgとなります。
筋肉を効率的に鍛えていくために必要なタンパク質は除脂肪体重あたり2g/日が理想とされていますので、この人の場合、1日に126gのタンパク質を摂取するのが理想となります。
「意外と少ないな」と思うか知れませんが、このタンパク質のグラム数は乾燥重量です。
タンパク質食品の代表である肉類ですと、その重量はタンパク質:水分=1:4ですので、乾燥重量で126gのタンパク質は、126g×5=630gとなります。
かなり、頑張って食べないといけない量です。
筋トレしたらしたら必要な炭水化物の量は?
タンパク質を効率的に合成して筋肉にするために、タンパク質の倍量の炭水化物が必要とされています。
ですので、今回のモデルの人の場合、126g×2=252gの炭水化物が必要となります。
この場合の炭水化物のグラム数も乾燥重量で、炭水化物もタンパク質とほぼ同じく1/4が水分となりますので、実際のご飯や麺類に換算すると1,260gとなります。
ちなみに、カロリーとしてはおよそ1000kcalです。
具体的な食事メニューの例
下記のリンクは、筆者が執筆した最新の「筋トレの効果を高める食事メニュー・レシピ」の記事です。
実際に筆者が作った料理写真を具体的に解説しています。是非、ご参照ください。
食品で摂りきれないタンパク質はプロテインで
今回のモデルの人の場合、1日あたりに必要なタンパク質量は126g(乾燥重量)ですが、一般的に人間が一度の食事で消化吸収できるタンパク質は乾燥重量で30g前後とされており、それ以上のタンパク質はエネルギーとして消費されます。
つまり、1日3食の場合、30g×3=90gしかタンパク質は摂取できません。もちろん、こまめに食べて1日4~5食のスタイルにすれば食事だけで必要なタンパク質は摂取できます。
しかし、これは普通の勤務形態の人には難しいことです。
そのために重宝するのがプロテインです。代表的なプロテインを紹介したいと思います。
ウエイトゲインプロテイン(ホエイプロテイン)
ビーレジェンド -be LEGEND- 『すっきリンゴ風味』【1Kg】 【高品質ホエイプロテイン】
一般的におすすめなのが、こちらのようなウエイトゲイン(体重増加用)のホエイプロテインです。
ウエイトゲインタイプは筋肉合成に理想的なタンパク質:炭水化物=1:2の比率で調合されているので、1食分(タンパク質乾燥重量30g)を摂れば、それだけでいいようになっています。
なお、ホエイプロテインとは牛乳の成分である乳清を原材料としており、素早く水に溶け、ダマになりにくく、臭いも味も良く飲みやすいと人気が高いタイプのプロテインです。
ウエイトゲインプロテイン(ソイプロテイン)
乳清を主成分としたホエイプロテインは、体質的に「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」という人には、吸収率が悪くなるのであまりむきません。
そのような人にはこちらのようなウエイトゲインタイプのソイプロテインがおすすめです。ソイプロテインは大豆を原料としたプロテインで、やや水に溶けにくく、独特の香りがありますが、ジュースや牛乳に溶かすと飲みやすくなります。
また、大豆に含まれるレシチンも豊富ですので、健康志向の人に人気です。
なお、こちらのタイプもウエイトゲイン(体重増加用)ですので、タンパク質:炭水化物=1:2の筋肥大・筋密度向上に理想的な配合になっています。
ウエイトダウンプロテイン(ソイプロテイン)
ザバス ウェイトダウン ヨーグルト風味【50食分】 1,050g
ダイエット目的で筋トレをしている人やカロリーが気になる人におすすめなのが、こちらのようなウエイトダウンタイプのプロテインです。
ウエイトダウンプロテインはできるかぎり糖質・炭水化物を控えた配合になっており、必要なタンパク質を低カロリーで摂取することが可能です。
おわりに:大胸筋以外の筋トレメニューを知りたい方は…
筋は鏡で自分を見たときに目立つ筋肉なので、多くの男性が鍛えようと考えます。一方、背中の筋肉は自分では見えないので、あまり意識されませんが、いわゆる「鍛えた身体」=「逆三角形」の身体を形作るのは背中の筋肉(広背筋)です。胸筋を鍛えたら、次は是非、広背筋を鍛えましょう!
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