アルツハイマー病の人は、ある種類の単語を認識する能力が落ちていると分かった。
難しいとされる早期アルツハイマー病の診断に、単語認識テストが応用できるかもしれない。
早期診断は難しい
英国のヨーク大学とスペインのオビエド大学の共同研究グループが、神経心理学の専門誌ジャーナル・オブ・ニューロサイコロジー誌のオンライン版で2015年6月24日に報告した。
認知症の主な原因の1つで、脳細胞が徐々に死んでいく「アルツハイマー病」。
早期アルツハイマー病の人は、「過去の出来事を思い出せない」「言葉が出てこなかったり理解できなかったりする」の2つの症状に最も悩まされている。
アルツハイマー病を早期に診断するのは容易ではない。単なるもの忘れなのか、病的なもの忘れなのかを早期の段階で区別するのは難しいのだ。
正しい単語を選んでもらった
研究グループは、早期アルツハイマー病の人で単語の認識に問題があれば、単語認識テストを診断に使えると考えた。
そこで今回、早期アルツハイマー病で単語の認識能力が損なわれているのかどうか、もしそうであれば、認識しづらい単語に特徴はあるのかどうかを検証した。
検証の対象者は、66歳から91歳までの軽度または中程度のアルツハイマー病と診断された40人。
比較対照は、年齢、性別、教育などが一致した健康な25人とした。
対象者には、1つの正しい単語と3つの嘘の単語を画面上に同時に表示し、その中から正しい単語を選んで指してもらうという試験を行った。
例えば、EAGLEという単語をSLINT、OMPUL、CROOMという嘘の単語と共に表示した中から選んでもらった。
5個に1個間違えた
健康な人たちは、正しい単語を簡単に指すことができた。
これにより、この人たちと年齢、性別、教育などが一致したアルツハイマー病の人たちも、少なくとも発症前にはこれらの単語を知っていただろうと確認できた。
ところがアルツハイマー病の人で試験した結果、5個に1個程度は間違えて、正しい単語を選ぶことができなかった。
次に、正しく認識して正解しやすい、または認識できずに間違えやすい単語に特徴があるかどうかを調べた。
3つの特徴を見つけた
結果、3つ場合に正しく認識しやすいと分かった。
(1)普段あまり使わない単語よりもよく使う単語
(2)抽象的な意味の単語よりも具体的な意味の単語
(3)大人になってから学んだ単語よりも子どもの頃に学んだ単語。
この3つ以外の単語の特徴(単語の長さなど)は、試験の成績に影響しなかった。
研究グループは、脳の左側頭葉前部の損傷が、単語の認識に問題を起こしていると予測している。
概念や単語の意味理解の処理に関わる部分だ。
単語の認識能力に関する今回の発見は、今後、アルツハイマー病の早期診断に応用できる可能性があると研究グループは見ている。
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